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【2018年11月】特別インタビュー

「腸温活」の第一人者 松生恒夫 先生

腸を温めて『停滞腸』を
解消しましょう

東京都立川市の松生クリニックには東京のみならず、腸の病気を抱えている多数の患者さんが全国より訪れています。院長の松生恒夫先生はこれまで4万人もの患者さんの大腸内視鏡検査を実施してきました。 その松生先生が名づけた「停滞腸」とその改善法である「腸温活」についてお話をお聞きしました。

先生は「停滞腸」という言葉を作られました。それについて教えてください。    

うちのクリニックに来られる患者さんの中で特に目立って増えている症状は便秘です。もちろん、これは腸に原因があります。
腸は常に蠕動(ぜんどう)運動と分節運動をしていますが、これらの機能低下による状態が「停滞腸」です。口から肛門までは1本のパイプのようにつながっています。これがまっすぐ上下に立てられているならば、重力に任せておけばいいのでしょうが、実際はそうなっていません。
小腸は複雑に絡み合っていますし、大腸は、上下左右に小腸を囲んでいます。つまり、重力に逆らって食べ物を送らなければなりません。そこで、筋肉や腸管が収縮する蠕動運動や分節運動が必要になってくるのです。このように腸の動きが悪くなってくると、消化吸収や排泄といった腸の働きが低下し、本来、排泄されなければならない不要な老廃物や毒素が長期にわたって体内に溜まることになります。下腹部の張りや腹痛の原因になっているのです。それだけでなく、便秘をはじめとして、ニキビや肌荒れなどの肌トラブルも引き起こします。
さらに、便秘の自覚症状はないものの、体に老廃物や毒素がたまって汚れてしまった腸のことを私は「ヨゴレ腸」と名付けました。   

「停滞腸」の原因は何ですか?

やはり生活習慣です。1日3食が基本ですが、それを2回しか食べない人が少なくありません。これを欠食といいます。食事面でいえば、ダイエットがあげられるでしょう。欠食やダイエットに共通しているのが食物繊維の不足です。食事の量が減ることで、食物繊維の摂取量も減ってしまいます。食物繊維には、水に溶けやすい水溶性食物繊維と溶けにくい不溶性食物繊維があり、前者は小腸における吸収を穏やかにして血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールを吸着して対外へ排出したりしますし、後者は排便をスムーズにしたり、同時に有害物質を排出して大腸がんのリスクを下げてくれたりするのです。そして、双方とも腸内の善玉菌の餌になります。加えて、運動不足やストレスも原因になりますから、気をつけなければなりません。

体が冷えるとどのような影響が腸に出てきますか?    

腸は自律神経によって支配されており、体が冷えると自律神経の中の交感神経が優位になります。すると、腸の動きや働きが停滞するのです。また、交感神経が優位になると、血流が悪化しますから、腸の血流量も減り、腸管運動が低下してしまいます。冷えが「停滞腸」の原因にもなっているのです。腸管免疫力という言葉があるように、腸には体全体の約7割の免疫細胞が集まっています。腸の不調によって免疫力も低下しますから、例えば、風邪をひきやすくなりますし、万病の元にもなっています。そこで、私は腸を温める「腸温活」を提唱してきました。

具体的な方法を教えていただけますか?

入浴、運動、食事など、さまざまな方法があります。例えば、入浴について紹介しましょう。
入浴でもっとも効果的に腸を温められるのは半身浴です。体温に比べて2℃から4℃ほど高めのぬるま湯に20分から30分ほど浸かってください。あまり熱いお湯なら、かえって交感神経を優位にしてしまいます。副交感神経を適度に刺激したいなら、そして、体を芯から温めたいなら、ぬるま湯の半身浴がお勧めです。
運動をするなら、ウォーキングがお手軽でしょう。5,000歩を目安にしてください。
食事でいえば、腸に有効な食べ物をとることです。代表的なものにオリーブオイルがあります。それもエクストラ・バージンのオリーブオイルです。温かい飲み物やスープをとることで体や腸は温まりますが、それにオリーブオイルを足すといいでしょう。サラダ油などと異なり、オリーブオイルには「油膜」があり、均一に薄く広がるため、すぐれた保温効果を発揮するのです。古くからヨーロッパでオリーブオイルは便秘解消の秘薬として重宝されてきました。そればかりか、抗酸化作用や抗炎症作用なども確認されています。

腸といえば、乳酸菌はいかがでしょうか?

乳酸菌ならば、植物性乳酸菌がいいですね。乳酸菌は腸内環境を改善し、感染症を防ぐことで知られていますが、特に植物性乳酸菌は腸に届きやすく、腸に到達すると乳酸を放出し、腸内の環境を弱酸性にしてくれます。弱アルカリ性を好む悪玉菌が住みにくくなり、善玉菌が増えるのです。腸内環境が改善されると、精神的なストレスも緩和されることが研究で明らかになっています。植物性乳酸菌が豊富な食べ物といえば、漬物やキムチが代表的です。昔の日本人の食生活である一汁一菜は健康的な食事としてよい手本といえるでしょう

川嶋朗 先生
松生恒夫先生プロフィール

1955年、東京生まれ。松生クリニック院長。医学博士。東京慈恵会医科大学出身。これまで4万人以上の大腸内視鏡検査を行なってきた第一人者であり、都内だけでなく、全国各地から訪れる患者の治療にあたっている。著書は『腸がよろこぶ植物性乳酸菌のチカラ』(双葉社)『「大腸リセット」で健康寿命を伸ばす』(廣済堂出版)『「腸を温める」と体の不調が消える』(青春出版社)など多数。

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