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【2018年1月】特別インタビュー

光岡 知足 先生

乳酸菌と免疫の関係

第1弾では「乳酸菌の真実」について光岡先生にお聞きしました。巷に広まっている“噂”の中には科学的な裏付けのないものもあることがわかる衝撃的なお話でした。読者の皆さんからの反響も大きく「乳酸菌が免疫を高める仕組みについてわかりやすく教えてほしい」とのご要望も多数寄せられました。そこで、インタビューの第2弾をお送りいたします。

乳酸菌をとるとどうして免疫力が高まるのか、その仕組みをわかりやすく教えていただけますか?    

食べ物は胃で消化され、腸へ送られます。腸には小腸と大腸があり、主に栄養分を吸収しているのが小腸です。
腸は栄養分を吸収するだけでなく、人間の体全体にある免疫細胞の約7割が集まっています。免疫細胞とは、体の中に入ってきたウイルスや細菌などの異物を攻撃して、病気にならないように体を守っている免疫細胞のことで、T細胞やB細胞、マクロファージなどといったさまざまなものがあります。
小腸が乳酸菌(菌体)を吸収するとき、粘膜表面にあるパイエル板を通過し、下で待ち構えているマクロファージに食べられます。このマクロファージが免疫細胞の司令塔のような役割をしており、乳酸菌の菌体成分を分析して必要な免疫細胞であるT細胞やB細胞に命令し、一番適合した免疫物質であるサイトカイン(IL–12,IFN–γなど)を出動させます。このサイトカインが多く発現することで免疫力が向上し自然治癒力が上がるのです。  

それで生きている乳酸菌よりも死んだ乳酸菌のほうがいいのですか?

そのとおりです。乳酸菌と言いましたが、乳酸菌の菌体成分や菌の代謝産物が免疫細胞を活性化させると言ったほうが正しいでしょう。生きたままの乳酸菌は体内に入ってから菌同士が凝集する癖があります。その塊のサイズが大きくなるとパイエル板の穴を通過することができません。だから、菌が生きているか死んでいるかは関係ないのです。パイエル板を通過しないかぎり、免疫力の向上は期待できません。だから生菌より死菌の方が菌数をたくさん確保できるので有効です。したがって、小腸に吸収される乳酸菌が多いほど免疫細胞の出番が多くなり、病気に強い体になるのです。これは私の実験で明らかになっています。ところが、世間では「生きた乳酸菌が効く」といった宣伝文句が流布されているのですが、それは間違いです。

乳酸菌が免疫力を高める仕組みは他にもあるのですか?     

ウイルスや細菌などが皮膚から侵入してくることはあまりありません。皮膚は角層で覆われているからです。でも、粘膜はウイルスや細菌が侵入しやすくなっています。風邪の予防にうがいをするのは、のどの粘膜についたウイルスや細菌を洗い流すためです。粘膜には粘膜免疫が働いてウイルスや細菌などの侵入を防いでいます。
粘膜免疫のひとつにIgA抗体がありますが、小腸のパイエル板を通過した乳酸菌の菌体成分は免疫細胞に刺激を与えた結果、このIgA抗体を作り出すのです。抗体はウイルスや細菌にくっついて無力化させます。中でもIgA抗体はウイルスや細菌以外の病原体にも同じ攻撃をします。また、最近の研究ではIgAの増加によって粘膜層の常在菌(古くから棲みついた善玉菌)を増やして腸内環境を整えることもわかりました。ですから、IgA抗体の数が少なくなれば、病気にかかりやすくなったり疲れやすくなったりするのです。赤ちゃんを病気から守るために、母乳には多数のIgA抗体が含まれています。

それが先生の提唱しておられるバイオジェニックスなのですね。

そうです。腸内フローラのバランスを整えるために生きた乳酸菌や酵母などをプロバイオティクスと呼んでいます。そして、大腸に生息する善玉菌のエサとなり、増殖を促進させる食品成分がプレバイオティクスです。これらの言葉は企業が大々的に宣伝していますから、今や知っている人は増えてきました。
私は、生菌を主とするプロバイオティクスや、エサとなって増殖を促すプレバイオティクスと区別するために、加熱されて死菌となった乳酸菌をはじめとして、生体に直接作用し、免疫機能促進や抗酸化作用などをもつビタミン類やフラボノイドなどをバイオジェニックスと呼んでいます。人間の免疫機能を向上させるためにもっとも重要なのがこのバイオジェニックスなのです。

光岡先生
光岡知足先生プロフィール

農学博士。理化学研究所、東京大学教授、日本獣医畜産大学教授、日本ビフィズス菌センター理事長などを経て、 現在、東京大学名誉教授。 ビフィズス菌研究の第一人者として世界に著名な腸内細菌学の世界的権威。 腸内細菌叢の系統的研究で1988年に日本学士院賞、 2007年に国際酪農連盟・メチニコフ賞を受賞。『腸内細菌の話』(岩波書店)、『ヨーグルト』(NHK出版)など、多数の著書がある。

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